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【質問】
 イージス艦はなぜ開発されたのですか?

 〔エイラート号事件により,〕天文学的なコストをかけた空母が,モーターボートに毛の生えたような高速艇の餌食とされてしまう可能性が出てきたのである.
 さらには,海中の潜水艦から発射できるミサイルも開発された.
 あるいは,爆撃機が上空まで来て爆弾を落とす,というやり方でなく,超音速で飛ぶ攻撃機が,こちらの弾丸が届かない位置からミサイルを撃ってくるかもしれない.
 こういった,新たなる脅威に対抗するため,米軍は,多数の目標を識別でき,かつ電波の妨害にも強いレーダー・システムや,飛来するミサイルを撃ち落とすための各種兵器の開発を急ぐことになった.
 その集大成がイージス・システムなのである.

林信吾著『反戦軍事学』(朝日新聞社,2006/12/30),p.97-98

というのは本当ですか?

 【回答】
 ええと,その著者は,新型レーダーやミサイル迎撃システムの開発というのは,普段から継続的に行われるものではない,とでも言いたいのですかね?

 集大成といえば集大成かもしれませんが,イージス艦が開発されたのは何故か?といえば,ソ連海軍の飽和攻撃に対抗するためのものです.

 ソ連海軍としては,まともに殴り合ったのでは,とてもじゃないが米艦隊には叶わない.
 特にあの,攻撃空母ってぇヤツぁ凶悪過ぎる.50年代には核攻撃も米攻撃空母の任務の1つだったし.
 そこでゴルシコフ元帥,考えた.
「米空母機動部隊が対処できないくらい大量のミサイルを撃ち込んでやればいい」
 しかも,ただつるべ撃ちするんじゃない.遠くから,色んな方向から撃ってやるんだ.

 これが人呼んで「飽和攻撃」
 テストによく出るから覚えておこう(何のテスト?)

 ソ連艦隊はこの戦術にしたがってせっせと対艦巡航ミサイルを整備した.
 爆撃機にはAS-4やAS-6.
 艦艇にはSS-N-3.
 1958年から対艦巡航ミサイルの開発を開始して,その努力が実ったのがソ連海軍の演習「オケアン70」(1970年),「オケアン75」(1975年).
 いずれも90秒以内に100発が仮想目標に着弾するという実績を出した.
 1秒ごとに1発以上のミサイルが,違う方向から飛んでくるというわけだ.
 さすがのアメリカ海軍も,これじゃたまったもんじゃない.

 だが,数を増やして問題を解決するのがロシア式なら,テクノロジーで何とかするのがアメリカ式.
 まず,タイフォン・システムの開発が1958年開発から始まったが,これはタイフォン原子力フリゲートの価格が高くなって中止.
 ちょうどマクナマラ国防長官の時代,しかもヴェトナム戦争が始まったころに当たってしまったのが不運だった.

 代わってスタートしたのが,1963年から始まったASMS計画.
 Advanced Surface Missile System だから「先進的艦載ミサイル・システム」とでも訳すべきか.
 海軍内には否定論者もいたようだが,開発最中,エイラート号事件が1967年に起こって,開発が一気に加速.
 1973年12月には,プロトタイプのイージス・システムを試験艦「ノーザン・サウンド」に搭載して試験が行われるところまで漕ぎつける.
 そして,1978年9月にはイージス巡洋艦「タイコンデロガ」の建造契約が交わされ,1983/1/22,同艦就役.

 かくして,ギリシャ神話のゼウスが娘アテナに贈ったという神盾(イージス)は,この世に具現化した,という次第.

 このように,まず戦術が先にあり,兵器はその戦術が要求するものに従って開発されるものなんだ.
 決して,一つの事件で慌てて開発が始まるというものではない.事件が戦術を見直すきっかけにはなるかもしれないけどね.
 第一,それじゃ現代では時局に間に合わない.
 兵器はガチャポンとは違うんだから.

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出典: petapeta
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